根強い人気 瓦屋根の塗料選定ポイント

目次
根強い人気を誇る瓦屋根。その塗替えの特殊性
日本の住宅における屋根材の主役は、軽量で経済的な金属屋根やスレートに移行しています。しかし、S形瓦やF形瓦など、デザイン性に富んだ瓦屋根は、洋風・和風問わず、今なお根強い人気を誇っています。

瓦屋根は、素材と表面仕上げで大きく分けて以下の5種類に分類されます。
- 釉薬瓦(陶器瓦)
- 無釉瓦(素焼き瓦)
- いぶし瓦
- 乾式洋瓦(モニエル・スカンジア等)
- プレスセメントがわら(厚形スレート)

このうち、いぶし瓦は、その表層の炭層(炭素皮膜)が塗装によって剥離する恐れがあるため、原則として塗装は不可とされています。
しかし、いぶし瓦を除く、その他の瓦(釉薬瓦、無釉瓦、乾式洋瓦、プレスセメントがわら)については、適切な下地処理と塗料を選定することで塗装が可能です。特に、乾式洋瓦とプレスセメントがわらは、表面仕上げ層の劣化により吸水性が高まるため、定期的な塗替えが不可欠となります。
瓦の塗替えは他の屋根材にはない特殊な工程が求められるため、「どの塗料を選び、どう施工すればいいのか」という疑問が多く発生します。本コラムでは、塗料メーカーの視点から、塗替えで失敗しないための「瓦の見極め方と塗料選定のポイント」を詳細に解説します。
瓦の見極め方とそれぞれの注意点
瓦屋根の塗替えを成功させるための鍵は、まずは瓦の種類を見極めることです。
- 釉薬瓦(陶器瓦):瓦に釉薬が塗られてガラスのような光沢をもつ。釉薬が塗られてない重ね部や裏面はオレンジ~クリーム色。劣化してくると小さなひび割れ(貫入)が発生する。
- 無釉瓦(素焼き瓦):裏も表も光沢のない素焼き色の瓦。
- いぶし瓦:いぶし銀と言われる鈍い光沢をもつ。瓦の裏面もいぶし銀。塗装NG。
- 乾式洋瓦(モニエル・スカンジア等):瓦の小口部分が凹凸になっている。表面は顔料とセメントを混ぜた着色セメント層(スラリー層)であり、劣化すると脆く粉状になる。改修の際は劣化したスラリー層を完全に除去し、浸透性の高い専用シーラーを使うことが絶対条件。
- プレスセメントがわら(厚形スレート):瓦の小口部分が平面で、裏面はセメント地。セメントと砂をまぜて高圧成型した瓦です。製造時には塗料を強制乾燥塗装してありますが定期的な再塗装が必要な瓦。
瓦ごとに特化した「下塗り材」の選定(プロの最重要視点)
それぞれの瓦毎で特長が異なるため、瓦に応じた下塗り材の選定が必要です。
釉薬瓦(陶器瓦)や無釉瓦(素焼き瓦)の場合は、硬質で無機質なガラス系の素材にもしっかり付着するような付着性を重視した下塗りが必要です。
乾式洋瓦(モニエル・スカンジア等)は特に注意が必要で、着色セメント層(スラリー層)は大気中の二酸化炭素が侵入し中性化が進むと脆弱化・粉状になり、塗膜の密着を妨げる原因になります。この層が残ったまま上塗り塗装をすると、どんなに高性能な塗料を使っても、数年で塗膜が層ごと剥がれ落ちるという致命的な施工不良に繋がります。そのため乾式洋瓦の塗装においては、下地処理の高圧洗浄で脆弱なスラリー層をしっかりと除去することが必須となり、さらに残ったスラリー層ごと固めることができる下塗り材の選定が必要です。
プレスセメントがわら(厚形スレート)は、経年劣化が進むと表面塗膜の剥離が発生し、骨材や砂素地面がでてきてしまいます。素地の吸い込みを止め、既存塗膜には上塗り塗料を強固に定着させる付着性の良い下塗りが必要です。

前述の通り、塗替えの成否は下塗り材にかかっています。上塗り塗料の性能を最大限に引き出し、塗膜を瓦にガッチリと定着させるのが下塗り材の役割です。
塗料メーカーとしては、上塗り塗料と専用下塗り材をセットで提供する「瓦屋根改修塗装システム」での選定を推奨しています。異なるメーカーや種類のシーラーを組み合わせると、密着不良を起こすリスクが高まるためです。
弊社おすすめ瓦用下塗り塗料
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まとめ:塗料選びは「瓦の見極め」と「下塗り」が全て
瓦屋根の塗替えは、一見すると手間がかかるように見えますが、「瓦の種類の正確な判定」と「それに合わせた適切な下地処理・専用下塗り材の使用」という基本を守れば、長寿命で美しい仕上がりを実現できます。

上塗り塗料の耐久性や機能性だけでなく、下地との密着を確保する下塗り材までをしっかり提案できる施工店を選ぶことが、お客様にとって最高の選択となるでしょう。
弊社では、あらゆる瓦の特性を知り尽くした最適な塗料システムをご提案しています。瓦屋根の塗替えでお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。




